一、二、三=一

The title 一、二、三=一 can be read by Chinese, Japanese and Koreans and translates into 1,2,3=1.  (English official title: "When the East was One")

A cast aluminum sculpture derived from a virtually modeled form that combines the silhouettes of China and Korea, seen from the front, and Japan, seen from the side.  Installed at Kyushu GeiBunKan (九州芸文館) in Fukuoka-ken, Japan in 2013. 

「一、二、三=一」――日中韓を表す「形」

執筆者:インゴ・ギュンター 2013年6月25日 0
カテゴリ: エッセイ・レポート 中国・台湾 国際 国際関係全般 文化・歴史 朝鮮半島

その広大さゆえに、人間が「国」を目で捉えることは難しい。それでも

人々は、国旗や国歌、あるいは通貨のような抽象的シンボルで国を意識する
のと同じように、国土の形、つまり領土の輪郭によって国を認識する。そし
て、国の地理的形状や位置は単なるシンボルを超え、その国の文化や歴史に
否定しがたい影響を及ぼす。ロバート・D・カプランが近著『地理の逆襲』
で説得力たっぷりに述べたように、位置と形はその国の運命に直結してお
り、無視することはできないのだ。

丸を四角にするような......

1年ほど前、九州新幹線の筑後船小屋駅前に新たに開設される九州芸文館 (今年4月27日にオープン)のための彫刻作製を依頼されたとき、私はとて もわくわくした。芸文館の設計は隈研吾氏。自分の作品が隈氏の建築の一部 となるという事実のみならず、この芸術センターの意義と目的を体現する作 品を創造するという挑戦に心が躍ったからだ。芸文館は、日本、中国、韓国 という地域3カ国が文化交流や交易を行なうなかで地政学的結びつきを深め てきた日本の玄関口であった筑後地域を記念するものだと私は理解した。通 信や移動手段が増えて、地理的近さのメリットが弱まる前は、この3つの国 が隣接していることに歴史上大きな意味があった。だが、九州芸文館は古き 良き時代をなつかしむためのものではない。3カ国の人々が直接顔を合わせ て、あらゆるレベルでの対話を重ねることにより、今も続く思想や感性の交 流を象徴するものとして、この先も重要な役割を果たすことになる。

この3つの国の文化と国家を表現する彫刻を考えるのは、非常にやりがい のある仕事だった。ある意味、丸を四角にするような実現不可能な課題でも ある。そこで私は着手にあたり、まず、ある種の失敗を受け止めるところか ら始めようと戦略的に考えた。この仕事は誤解、誤読され、ねじまげられる ことになるだろう。そう納得することで、私は自由を手にいれ、自らを鼓舞 した。

3カ国の文化をあわせて象徴するという課題そのものの難しさに加え、限 られた予算と時間といった制約の他にも、デザイン・製造・設置の過程で思 いがけない問題が次々と浮上した。それでもやれることをやるしかない(フ ランク・ロイド・ライトに、医者は過ちを埋めることができるが、建築家に はツタを絡ませるくらいしかないという有名な言葉がある。公共の彫刻にも 同じことが言える)。挑戦は難しい方が興奮も大きいものだ。

3カ国地域の歴史と未来をともに象徴する形をいったいどのように作るの か? それを考える作業は、常に順調と言えないどころか時に競い合う、似 ていながら激しく隔たる3つの文化の関係をほぐそうとしているかのごとく に感じることもあった。まして、近年、未解決の領土問題に新たなスポット ライトが当たってしまった。何週間もの創造的拷問の結果、出てきたのは非 現実的に複雑なアイディアか、予算の折り合いがつかないものかのどちらか だった。

共通性と多面的な複雑さ

そうした中で思いついたの が、3つの国の形を、ひとつの3 次元構造物にまとめることだっ た。これはすなわち、他の2つが 欠けてはどの一国も存立し得な いという考えを形で示すことで もある。

3カ国の輪郭を何度も何度も合 わせてみた。そして、金属の大 きな固まりや透明な樹脂、金属 管の結び目を使った表現(この ために世界で最も排気管作りの うまいイタリアのメーカーに発 注することも検討した)も考え てみた。だが、樹脂は屋外で耐 久性が低く、金属管は抽象的で わかりにくい。金属の固まりは 重くて強風対策も難しい......か くして、進行管理をする学芸員 チームをはらはらさせながら、 私はしばしの足踏みを余儀なくされた。

 だが、突如、運良く、重量と風の問題を解決する唯一無二の方策は、中空
にすることだと気がついた。印象は軽く、オープンなものになるうえに、こ
れによって「中をのぞく」あるいは「虚空」を望むという効果も生まれるこ
とになる。絵画と違って彫刻は双方向の動画のようなものである。見る者
は、オブジェに近づきながら、あるいは周囲を回りながら、視点を変えるこ
とで、様々な受け取り方をする。

共通性と多面的な複雑さを持つ日中韓というユニークな3カ国関係の「ヒ ント」は、この彫刻が見せる様々な景色の中に見てとることができるだろ う。東アジア史を専門とするリチャード・ケーガン教授は、「日中韓の関係 性を動的に体感」したと語った。

特定の場所から眺めない限り、この彫刻が示す国の形にはそれなりの「ゆ がみ」がある。それこそが、3つの国の「一体感」を発見するための暗喩的 な鍵なのである。すなわち、一、二、三=一なのだ。

 

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執筆者:インゴ・ギュンター

メディア・アーティスト。1957年生れのドイツ人。ゲーテ大学で、民族学と文化人類学を専攻 するとともに、デュッセルドルフのアート・アカデミーでヨーゼフ・ボイスに師事。その後、ナ ム・ジュン・パイクのアシスタントをしながら、ビデオアートを学ぶ。地球儀をキャンパスに世 界情勢を描く手法で知られ、その作品は1994年から99年までの6年間、フォーサイトの表紙を 飾った。フォーサイトのフェイスブックの表紙も最近の地球儀アートの1つ。2006年から07年に 東京芸術大学客員教授を務めた。